先月21日から豊田市美術館で始まった、クロード・モネの晩年の作品に焦点をあてた特別展「モネ 睡蓮のとき」を鑑賞してきました。

フランス・ジヴェルニーの自宅庭園を丹念に作り込み、晩年のモネはその庭園を創作の中心に据えていました。
池の水面に映る空や光の移ろいを描いた「睡蓮」シリーズでは、時間や季節、天候による変化を追求し、「形」ではなく「光」や「色彩のゆらぎ」に重きを置いた表現が特徴的です。
その抽象的な世界は、自然の永遠性や無限性を感じさせ、「時間の流れ」や「生と死」までも暗示するような深い奥行きがありました。
晩年のモネは白内障により視力が低下し、絵の色彩は赤みを帯び、輪郭はぼやけ、筆致も荒々しくなっていきます。
それでも、幻想的で情熱的な色彩が印象的な作品も多く、「病による衰え」ではなく“表現の到達点”として評価されているとのこと。
平日にもかかわらず大変な賑わいでしたが、名作の数々にしっかり浸ることができました。
モネの後は、美術館そのものもじっくりと堪能。


建築家・谷口吉生氏による、水平・垂直の直線と矩形を基調としたモダンな建築は、館内の展示空間だけでなく、館外の庭園や水盤との調和も見事。
内部の展示と外部の建物、その両方を楽しめる豊田市美術館でのひとときは、まさに至福の“美術館巡り”でした。
次回は隣接する豊田市博物館で開催されている古代エジプト展鑑賞記の様子を報告します